出汁の正しい保存方法は?昆布って冷凍しても大丈夫?だし汁の作り置きはできるの?このページではそんな疑問にお答えします。日本人なら知っておきたい、美味しいだしの取り方やレシピ、余っただし汁の冷蔵、冷凍の方法を紹介します。

和食の基本のだし

 和食を語るうえで欠かせない存在の出汁。かつお節や昆布から丁寧に取っただし汁は香りもうま味も格別です。しっかりとだしを取って普段の料理に使いたいと思っているけど、手間や時間がかかるからという理由で諦めていませんか?

本格的なだし汁を作るのは実は意外と簡単なんです。作っただし汁を保存しておけば、いつでもすぐに使う事ができます。基本のだしの取り方を覚えて、気軽にいつもの料理に取り入れてみてはいかがでしょうか。

かつお節

 かつおだしには一番だしと、一番だしを取った後の出し殻を使った二番だしがあります。芳醇な香りと透き通っただし汁が特徴の一番だしは、お吸い物や茶碗蒸しなどのだしの風味を生かした料理に最適です。二番だしは一番だしに比べ香りは弱いですが、コクがあり、さまざまな料理に合わせることができます。

 かつおの削り節には薄削りと厚削りがあります。一般的に家庭で使われる薄削りは花かつおと呼ばれ、短時間で香り高いだし汁が作れます。一方、厚削りはじっくりと煮出してだしを取るため、濃厚なだし汁になります。ここでは手軽に使える花かつおを使っただしの取り方を紹介します。

・一番だしの作り方

鍋に水1,000mlを入れ沸騰させる。火を止めてかつお節30gを入れ1〜2分おいてかつお節を取り除く。

・二番だしの作り方

鍋に水500mlと一番だしを取った後のかつお節の出し殻を入れ中火で加熱し、沸騰したら弱火にして5分煮出す。火を止め、追いがつお用のかつお節5gを入れ1〜2分おいてかつお節を取り除く。

コクのある濃いだし汁を取りたいときには厚削りのかつお節がおすすめ!

昆布

昆布だしはまろやかで上品な風味が特徴です。おでんや煮物などの素材の味を生かした料理によく合います。

 昆布にはだし用、煮て食べる用、生食用がありますが、だしを取る時はだし用を使うようにしてください。昆布は採取された地域によって種類が異なり、だし用の昆布はうま味が強い種類の昆布を使用しています。種類ごとに特徴があり、風味やだし汁の見た目もそれぞれ違います。いろいろな昆布を試して、だしの違いを楽しんでみるのも良いですね。

・昆布だしの作り方

鍋に水1,000mlと昆布10gを入れ火にかける。沸騰直前まで加熱し、昆布を取り出す。

合わせだし

 出汁は異なる種類を組み合わせることで相乗効果が働き、うま味が何倍にも増します。だしのうま味の成分は主に「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」の3種類です。うま味成分を2〜3種類組み合わせるとより深みのあるだし汁が作れます。濃厚なだし汁は煮物や鍋物などあらゆる料理に合います。

・かつお節、昆布、煮干しの合わせだし

鍋に水1,000mlと昆布5g、頭とはらわたを取った煮干し10gを入れ30分〜1時間おく。中火で加熱し、沸騰直前で昆布を取り出す。弱火で5分加熱し、火を止めてかつお節10gを入れ、1〜2分おいて煮干しとかつお節を取り除く。

水出しのだし汁

 煮出さずにだしを取る「水出し」は、手間をかけずに失敗なくだし汁を作ることができる、とても便利な方法です。煮出しただし汁に比べると風味とコクは弱いですが、クセが無くあっさりとしていますので、どんな料理にも合います。

・昆布と煮干しの合わせだし

お茶ポットなどの蓋つきの容器に水1,000mlと昆布20g、煮干し20gを入れる。冷蔵庫でひと晩おいて、昆布と煮干しを取り除く。※昆布を入れたままにしておくとぬめりが出てきます。

お茶ポットにポンと入れるだけ。だしパックで水出しのだし汁も簡単!

だし汁の保存方法

 本格的なおいしいだし汁を使って料理したいけど、毎日だしを取るのは大変だと思っている方は多いのではないでしょうか。だし汁は作り置きができます。多めに作って保存しておけば、必要な時にすぐ使えて便利ですよ。だし汁の保存方法を覚えて、いつもの料理に気軽に取り入れることで、だしがもっと身近なものになるはずです。

冷蔵保存

 だし汁は常温では日持ちしません。常温で置いておくと風味が落ちるだけでなく、雑菌が繁殖して傷んでしまいます。そのため、だしを取ってその日のうちに使い切れない場合は冷蔵庫に入れる必要があります。冷蔵庫にだし汁を常備しておくことで、朝の忙しい時間でもだしのきいた味噌汁を手間なく簡単に作ることができますよ。

・冷蔵保存の方法

煮出して取っただし汁は、冷ましてから密閉容器に移して冷蔵庫に入れます。5〜6日は持ちますが、2日ほどで風味が落ちてきますので早めに使い切ってください。

水出しでだしを取った場合は、移し替える必要もなくそのまま冷蔵保存できるのでとても便利です。継ぎ足しはせず、3〜4日で使い切るようにしてください。

保存する際にだしの素材を入れたままにしておくと傷みやすくなりますので、必ず取り除いてください。

冷凍保存

 だし汁は冷凍することもできます。冷蔵では長くても1週間ほどしか日持ちしませんが、冷凍すれば長期保存が可能です。こまめにだしを取る時間が無いという方は、まとめてだし汁を作って冷凍するのがおすすめです。

・冷凍保存の方法

 煮出しただし汁は十分冷ましてから、水出しのだし汁はそのまま、ジッパー付きのフリーザーバッグや製氷皿に移して冷凍庫に入れてください。フリーザーバッグは量を入れ過ぎないようにして、厚みを均等にして板状に凍らせると、必要な分だけ割って使う事ができます。製氷皿で凍らせた場合は、空気に触れることで風味が損なわれたり、冷凍庫のにおいが移ったりする可能性がありますので、凍ったらフリーザーバッグや密閉容器に移し替えて保存してください。濃いめに煮出して取っただし汁を製氷皿で凍らせただしキューブを作っておくと、味噌汁や離乳食を作るときにも便利です。かつお節や昆布など種類の違うだし汁をそれぞれ冷凍保存しておき、料理に合わせてブレンドして使うのもおすすめです。

1ヶ月くらいは保存できますが、2週間ほどで風味が落ちてきますのでなるべく早めに使い切ってください。

保存しただし汁を使ったレシピ

 だし汁を作り置きしておけば、冷蔵庫から取り出してすぐに料理に使う事ができます。ここでは本格的なだしの風味を生かした料理が簡単にできるレシピを紹介します。冷蔵保存のだし汁はそのまま、冷凍保存のだし汁は前日に冷蔵庫に移しておくか、時間が無い時は電子レンジで解凍して使います。

・たけのこの土佐煮

水煮のたけのこを使って、あっという間に完成!おかずにもおつまみにもおすすめの1品です。

作り方(2人分)

水煮たけのこ250gを5mmの厚さにスライスし、いちょう切りにする。鍋にたけのこ、だし汁300ml、しょうゆ大さじ1、みりん大さじ2、砂糖大さじ1を入れ、落し蓋をして15分ほど中火で煮込みます。火を止めてかつおの削り節10gをまぶし、器に盛りつけます。

※削り節はフライパンで軽く炒ると、より香りがたちます。

※だし汁はかつお節と昆布の合わせだしがおすすめです。

仕上げにまぶしたり、トッピングに最適なサクサク食感の削り節です。

・だししゃぶ

味付けしただし汁でしゃぶしゃぶするので、タレいらずであっさりと食べられます。野菜をたっぷり摂ることができるヘルシーメニューです。

作り方(2人分)

鍋にだし汁1,000mlと酒50ml、しょうゆ大さじ1、塩小さじ1を入れひと煮立ちさせる。しゃぶしゃぶ用の豚肉400g、白菜、長ねぎ、水菜など好みの野菜を食べやすい大きさに切る。火にかけただし汁に野菜を入れ、豚肉をしゃぶしゃぶしながら野菜と一緒に食べます。

※豚肉は煮過ぎないようにしてください。

※だし汁は昆布、かつお節、煮干しの合わせだしがおすすめです。

だしの保存方法

 かつお節や昆布などのだしの素材はどのように保存していますか?だしは香りと風味がとても大事です。保存方法を間違えると、せっかくの風味がだいなしになってしまいます。正しい保存方法やだしが使いやすくなるポイントを紹介します。

かつお節の保存方法

 かつお節は未開封であれば常温で1年ほど持ちますが、一度開封して空気に触れると、酸化して風味がどんどん落ちていきます。開封後はできるだけ空気と湿気に触れないように、密閉容器に入れて冷蔵庫で保存してください。においの強い食品の近くに置くとにおい移りの可能性があるので注意が必要です。

1回に使う分量を食品ラップで包んで、ジッパー付きのフリーザーバッグに入れて保存すると使う分だけ取り出せて便利です。冷蔵保存したかつお節は1ヶ月以内に使い切るようにしてください。1ヶ月で使い切れない場合は冷凍保存がおすすめです。冷凍の場合は半年ほど保存が可能です。

保存しておいたかつお節が傷んでいるのではと心配になった時は、青かびが発生していないか、かび臭くないか、異常に酸っぱいにおいがしないか、などを確認してください。

昆布の保存方法

 昆布は長期保存が可能な乾物ですので常温で1年以上保存できますが、長期間保存する場合は高温多湿を避けるためにも冷蔵または冷凍での保存がおすすめです。使いやすい長さにカットして、蓋つきの容器に入れるとよいでしょう。冷蔵庫から出した時に結露して水分がついてしまいますので、2〜3回分の量を常温でおいておくと便利です。

乾物は湿気が最大の敵です。水分がつくとカビが生じる可能性がありますので、冷蔵庫に出し入れする回数はできるだけ少なくしましょう。昆布は新しいものよりも、1年以上寝かせたほうが出汁の味に深みが出ると言われていますので、上手に保存して昆布のうま味を引き出しましょう。

煮干しの保存方法

 煮干しは小魚を内臓もまるごと干したものなので、かつお節や昆布に比べ脂肪分が多くなっています。脂肪分は空気に触れると酸化しやすいため、開封後は密閉容器かジッパー付きのフリーザーバッグに入れて冷蔵庫で保存してください。冷蔵で1ヶ月、冷凍すれば3ヶ月ほど持ちます。冷蔵庫から出すと結露して水分がつきやすいので、必要な分を取り出したらすぐに冷蔵庫に戻すようにしてください。においが強くなっていたり、黄色く変色していたりしたら酸化が進んでいますので、使うのは避けてください。

合わせだしの便利な保存方法

 合わせだしは和食のベースとして、使う頻度が最も多く使い勝手のよいだしです。その合わせだしをちょっとした工夫で楽に作ることができる方法がだしパックです。市販のお茶パックにかつお節、小さく切った昆布、煮干しを適量詰めます。フードプロセッサーがあれば、だしを全て粉砕してだしパックに入れるとよいでしょう。蓋つきの容器やジッパー付きのフリーザーバッグに入れて冷蔵または冷凍で保存します。パックのまま鍋で煮出したり、水出しでだし汁を作れます。

これ一つで濃厚な本格合わせだしが手間なく完成!

出し殻の保存方法

だしを取った後の出し殻にはうま味や栄養素が残っています。料理の材料として再利用できますので、捨てずに無駄なく活用しましょう。

出し殻の保存のコツ

 家庭ではだしを一度に使う量は多くありませんので、出し殻は保存しておいて、料理に使える量がたまったらまとめて使用するとよいでしょう。出し殻は傷みやすいので常温では保存できません。冷ました後はすぐに冷蔵または冷凍する必要があります。

・かつお節の出し殻の保存

だしを取ったあとのかつお節はしっかりと冷ましてから、水分を絞ってラップで包み冷蔵または冷凍で保存します。冷蔵の場合は3日ほど、冷凍だと1ヶ月程度保存が可能です。薄い板状にして冷凍しておくと、使うときに凍ったまま包丁で刻むことができるので便利です。

・昆布の出し殻の保存

昆布の出し殻は冷ましてからラップに包みジッパー付きのフリーザーバッグに入れて冷蔵庫に入れます。冷蔵で3日、冷凍で1ヶ月ほど保存できます。細切りにしたり、ひと口大に刻んでからフリーザーバッグに入れて冷凍しておくと便利です。

出し殻を使ったレシピ

 出し殻はたんぱく質などの栄養素も豊富でうま味もたっぷり残っています。だしを取って捨ててしまうのはもったいないです。料理に使うことでフードロスの削減にも繋がります。

・かつお節の出し殻入り焼うどん

いつもはかつお節をトッピングにして作る焼うどんですが、出し殻を具として混ぜ込んで作ります。味付けはめんつゆだけですが、かつお節の香りとうま味を味わえる一品です。

作り方(1人分)

フライパンにサラダ油を適量ひいて熱し、ひと口大に切った豚バラ肉50gを入れ炒める。豚肉の色が変わったら、キャベツ50g、細かく刻んだかつお節の出し殻を好みの量加えさらに炒める。茹でうどん1玉を入れ、めんつゆ大さじ1を加え軽く炒める。

麺のつゆ以外にもいろいろな料理に使える万能かつおつゆで誰でも料理上手に!

・昆布の出し殻の炒め煮

ヘルシーでうま味たっぷりの昆布の炒め煮は、冷めてもおいしいのでお弁当にもぴったりです。

作り方(2人分)

昆布の出し殻80gは細切りにしておく。油揚げ1/2枚は湯通しして、水気を絞り短冊切りにする。フライパンにごま油小さじ1をひいて熱し、昆布と油揚げを入れ炒める。だし汁50mlとしょうゆ大さじ1、みりん大さじ1を加え、汁気がなくなるまで炒める。

だしを使いこなすには上手に保存することが必要不可欠です

 このページではだしの保存方法を紹介しました。だし汁を作り置きしておくことで、毎日手間をかけてだしを取る必要がなくなります。ちょっとの工夫で料理に使いやすくなり、だしの風味をきかせた和食もグッとハードルが低くなるでしょう。だしの保存の仕方をしっかりと覚えて、気軽に普段の食事にだしを取り入れてみてはいかがでしょうか。